母なる川大野川を未来に継承する
大野川の概要
母なる川 大野川は大分 宮崎 熊本の3県にまたがる祖母傾大崩ユネスコエコパーク・ジオパークに指定された地域を源流とし、竹田市を流れ、豊後大
野市を貫通し、臼杵市、大分市を流れて別府湾に注ぎこむ基幹延長が107㎞、支流の数が138本、流域面積が1465㎢の大分県では一番規模の大きな河川であり、九州では4番目です。
上流部に阿蘇の伏流水が湧き出る湧水群があり、原生林には二ホンカモシカ、渓谷にはサンショウウオが生息しています。
中流部には、渓谷が形成され、オオヨシキリ、ホオジロ、河畔林にはゲンジボタルが見られます。
竹田の湧水群、支流の中津牟礼川は、ともに名水百選に選ばれています。下流部は餌となる付着藻類が豊富で、アユの産卵場となっています。
このように自然環境に恵まれた大野川です。主な漁業権魚種は、アユ・ウナギ・アマゴ・モクズガニ・ワカサギ・スッポン等。大野川漁協は、組合員約2000名(令和4年現在)の大分県最大の組合です。
大野川をとりまく現状
近年、河川環境の大きな変化により、大野川ではシラスウナギが激減、日本ウナギは絶滅危惧種となりました。
また、アユも稚アユの自然遡上が悪く減少気味です。
治水工事等によりコンクリートの護岸が増え、魚の棲み処や隠れ家がなくなってきています。
多くの森林が伐採され、腐葉土となる広葉樹が減少することで山に保水力がなくなり、河川流量はどんどん減少傾向です。
餌となる植物性プランクトンや、川のすべての生き物が消えていくのではないかと心配されています。
また、大野川漁協でも組合運営をとりまく現状は非常に厳しく、過疎、少子高齢化がいよいよ進み、組合員の数は当組合で、年間100~150人減少しています。
今後を担う若い世代の組合員が増えなければ、活気のある組合運営が厳しくなっていくと懸念しています。
組合の取り組み
このような現状から、組合では大野川の活性化を目指して、いろいろな取り組みを始めました。
多くの人に川を知ってもらいたい!まずは遊漁者を増やすことを目標に掲げ、毎年漁協主催でアユ釣り大会やアユ釣り教室を開催し、年々参加者が増加しています。
夏には各地で川を利用したイベントが開催されますが、漁協からは、つかみ取り用のアユ、エノハ、ウナギの提供をし、多くの世代の方々に楽しんでいただきながら川を身近に感じてもらえる様な取り組みをしています。
また小学校や高校の課外学習でも川の学習の一環としてアユの放流や釣り体験など積極的に協力しています。
イベント参加者の中には毎年恒例行事となっている方もいます。
SNSを最大限に活用し、情報発信していくことで川ファンや釣りファンが増え県内はもとより、全国各地から人が集まってきています。
「川は危険!」だから近寄らないのではなく、川を愛し、川と共に暮らす、また自然の厳しさも学ぶ経験をしながら孫子の代まで清らかな川を受け継いでもらいたいと考えます。
ほかに天然アユを増やすための施策として、アユの流下仔魚調査、及び遡上促進のため魚に優しい魚道作り、大野川の上流まで天然アユを生息させる目的で汲み上げ放流など行っています。
アユの放流
新たな試みとして、例年より早い時期にアユの放流を行いました。(稚魚のサイズは3cm、放流時期は3月)
できるだけ小さいうちに放流することで稚魚が川に馴染みやすく、天然アユに近い成長が期待できるからです。
その後のアユの育ち具合を見ると、ある程度の成果が出ている様子。アユ釣り解禁後の8月にはずいぶん釣果も伸びてきました。
専任監視員の配置
当漁協では専任監視員を配置しています。
関係各所と連絡を取りながら監視活動の強化をはかり、一日に2~3回見回りをして、川の様子や釣り人の状況、釣果についてもタイムリーに組合に報告があります。
小さな問題から深刻な問題まで迅速に組合事務局が対応できることにもつながり、違反者も減少傾向にあります。
今後も漁業権の侵害については厳正に対処する心持ちで頑張っていくつもりです。
私は元漁師!
私自身、若い頃より1月から4月はシラスウナギ漁、3月から10月はウナギ漁、3月から4月はカマスカ漁、6月から11月はアユ漁、9月から4月はモクズガニ漁と1年を通じて川魚漁をして生活をしておりました。
しかし、現在は、川魚漁で生活をする人は2000人の組合員のうち10人もいません。一口で言えば、川漁師では『いのちき』ができない!のです。
『いのちき』のできる川づくりを目指して 流れのすべてで繋がっていきたい
私は組合長に就任して7年目をむかえますが、ぜひ昔の私のような生活ができる川にしたい!と思っています。
内水面漁業を発展させるには、収入に結びつく漁業でなければなりません。
川に人が集まるような川の再生が最も大事だと考えます。
そのために、全国の漁業者が一致団結し、前へ前へ前へ!を合言葉に行動力を全面に押しだしていく。
また、現状の川は水路といっても過言ではありません。本来の川には、淵があり、瀬があり、澱みがあり、深み、浅瀬があるのが本来の川です。
本当の川づくりを目指し、大野川全体で100万本のネコヤナギを植える計画を展開していくつもりです。
水面にミズスマシやアメンボが浮き、ドジョウやメダカが泳ぎ、夏にはホタルが舞う。
アユやウナギが住み着き “充分によこう(休む)ことのできる川。
” 飲料水にもなるような清流を目指し、小さくてもきらりと光る組合づくりにむけて邁進していきたいと思います。
全国の内水面漁業の皆様方には川を愛し、魚を愛し、川漁を愛し、前向きに頑張っていただきたい。
各々に抱えている課題は多くとも『いのちき』できる命の川を目指して共に歩んでいきましょう。
大野川漁業協同組合代表理事組合長 若松 成次
【名称】
大野川漁業協同組合
【所在地】
大分県豊後大野市犬飼町久原686番地5
【連絡先】
TEL 097-578-0105
FAX 097-578-0131
【メールアドレス】
o-gyokyo@isis.ocn.ne.jp
【代表理事組合長】
若松成次
【組合員数】
2116名(令和3年4月1日現在)
【設立年月日】
1950年3月9日
【漁業権魚種】
アユ、エノハ、コイ、フナ、ウナギ、
スッポン、モクズガニ、ワカサギ、ハエ
【役職員】
理事14名
監事3名
職員2名
【事業】
*水産資源の管理及び水産動植物の増殖
*組合事業に関する組合員の知識の向上を
図るための教育及び組合員に対する一般的情報の提供
*漁場の利用に関する事業